いっちゃん
日本人の場合、男性は女性よりも統計的には5年早く死ぬ。一体こんな現象はどうして起こるのだろうか。神様もよくもこういう不平等な人間を創ったものだ。男は精神的にも苛酷な条件におかれている。日本では昔、感情を顔にあらわすことを、次のように戒めてきた。
男だって、感情を開けっぴろげにしたいことだってある。愚痴のひとつぐらいこぼしたい。声を上げて泣きたいこともある。男でもチョベリブになる。しかし女ならとかく当たり前のようにしている感情的行為が、男には出来ない。実際、男はそうしない。
話のついでだが、「泣きはらす」というように、人の目は泣くと赤くなることがある。これは、涙に含まれる塩分が目の表面を「こする」からである。しかし泣いても目が赤くなりにくい人もいる。例えば赤ん坊や女優。普通の人よりも頻繁に泣くので、塩分が薄くなり、なかなか赤くならない。一方男優は泣くと目があっという間に赤くなる。これはドラマなどで頻繁に泣くシーンを収録しないからである。ここでも男と女の違いがはっきりと分かる。
男ももう少し自分の感情を露出することが出来れば、もう少し楽に生きられるはずなのだが………。男は精神的には強いと思われているが、実は思った以上にデリケートである。男は外に自分の悩みなどをあらわさず、それゆえその感情が尾を引いてしまうのである。また世間は、男は女よりも肉体的に強いのだから、(これは正しい。)それに見あった精神的な強さが要求されて、別に科学的根拠でもなんでもない理由で精神的に強くならされてしまうのだ。本当に勝手である。
実際、男は体がそうたくましくもないヨチヨチ歩きの頃から、強くなることを求められる。例えば石につまづいて転び、ぶつけた場所が痛かった場合、よくこのようなやりとりを聞く。「おお、強い、強い、泣かなかったね。」或は注射、迷子といった場面でもそうだ。男の子は泣くものじゃない、と子供を洗脳するのだ。それで男の子があまりにもしつこく泣き続ける場合、愚かな親はその子をひっぱたき「泣きやみなさい!」と金切り声を上げる、と訳の分からぬ行為に出る。また、中学生くらいになると、もう男子生徒と女子生徒の扱いは全く違ったものになる。ちょっと悪さしただけで鉄拳制裁を加えられるのは男子生徒である。
歌謡曲で、男性歌手が女の気持ちを表す歌をうたっているのをよく聞くが(美川憲一や森進一など)、これはどういう説明が出来るか?自分の交際する女性の気持ちを想像して、その立場からうたっているのか?いや、必ずしもそうではない。実は男の気持ちなのである。男だって愚痴をこぼしたいが、体面が気になるので相手の女性と性をすりかえて、わざと女性のふりをして切ない恋をうたうのである。紀貫之「土佐日記」でも「をとこもすなる日記といふものを…」とあるが、それと同じである。
最近の男はよく泣くといわれるが、それでもやはり男が喜怒哀楽を抑えるのをよしとする風潮は全く変わっていないのである。だから男は愚痴ったり泣いたりする代わりに、煙草を吸ったり、酒を飲んで気をまぎらわすのである(誠に不健康だ)。そしてすぐ感情を顔に出す女を嫉妬して、「だから女はダメなんだよ」と超ヤガモな言葉を浴びせ、周囲と摩擦を起こし、ストレスはたまる一方。これでは男は早死にするわけだ。
男はつらいよ。
「男はつらいよ」今年、この映画の主役車寅次郎を演じた俳優渥美清氏が亡くなった。というよりも、寅さんが死んだというほうが適当だろう。多くの寅さんファンが号泣した。長らく松竹の看板として、日本人の心に力強く生きてきた寅さん、その寅さんは故郷葛飾柴又を旅立ったきり、もう帰ってこないのだ。「あばよっ」と言って。
合掌。